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何となく、中の人が気分で書いた小説らしい。
駄文注意、だそうだ。
それでも読みたいって変わり者はMoreからどーぞ、だってよ?
世界には――…否、少なくとも自分の周りに希望や幸せなどは無い。
少年の心は、幼くして締観の念しかない淀んだ物だった。
ざんばらに伸びた黒髪。服と呼んでいいのかわからない、痩せ細った身体を覆い隠すボロ布。土や泥で汚れた肌。骨と皮だけを連想させるようなこけた頬。
身体を引き摺り、生きているのかもわからない風貌にある中、小さな少年の眼だけは激しい一つの想いが宿っていた。
―生きたい――!と…。
世界の東に存在する、小さな島国。
侍と呼ばれる人々が存在する国…その片隅にある、小さな町で一つ噂が流れた。
『街道に鬼が居る』
お伽噺にもならぬ、陳腐な噂…町人たちも話し半分に話していたがが、町の力自慢たちが勇み、退治しに行ったが…。
結果は全滅、一人として帰って来る物は居なかった。
噂は本格的に流れだし、町人たちは『鬼』を恐れその街道を使う事ができなくなった。
しかし、街道は他の町との流通の場。
ほとほと困り果てた町人は、村外れに住む一人の剣士に頼み込んだ。
その剣士はあちこちで攘夷だ武士道だと言うご時世に、何もせずふらふらしている変わり者の、侍とは呼びがたい男だった。
しかし、困った町人たちの願いにはあっさりと首を縦に振ってみせた。
町人たちは意外さに驚いたが、変わり者のはぐれ剣士の事など心配する者はおらず、誰もが内心しめたとしか思っていなかった。
そんな町人たちの心中を知ってか知らずか、剣士は刀を一振りに着物のみ。鬼の巣に向かうというのに、鎧も兜もつけないまま向かった。
「これは…えらい惨状だね」
街道は、凄惨な光景だった。
そこら中、死骸とカラスで溢れかえっており死臭に満ち…賑やかだった昔の姿とは似ても似つかなかった。
そんな死骸の溢れる中、ボロ布を着た小さなこどもが、身の丈に合わぬ血で錆びた刀を手に死骸に腰を下ろしていた。
「ふむ、鬼退治に来たつもりだったが…随分と可愛らしい子鬼だ。その刀は、死体から剥ぎ取ったか」
男が呟いた刹那、少年は弾かれたように飛びかかり、血濡れの刀を振り下ろした。
ガズッ…!
切れ味の悪くなったなまくら刀の刃はその目的を達する力も無くなっていたか、男の掲げた納刀したままの刀に容易に受け止められた。
「うああぁっ!!!うぁぁっ!!」
少年は小さな身体を引く事なく目一杯使い、刀をめちゃくちゃに振り回す。
太刀筋もめちゃくちゃ、殺意はあり、殺すための動きではあるが、ただ手に持った刀を振り回してるだけ。
まがりなりにも剣士である男に取って、小さなこどもが振り回す刀など、恐る物ではなかった。
紙一重でかわし、時折鞘に納まったままの刀で受け止め受け流す。
「おっと、と…これは荒々しい子鬼だ」
その間、男はずっと少年の目を見ていた。
少年は狂犬のように吼え、叫び力の限り刀を振り回して。
必死に目が訴えていた。
生きたい、もっと生きたい!と。
男は一度、下がると静かに笑った。
「…坊主、人から剥いだ刀など捨てなさい。そんな物、坊主には必要ない物だ。代わりにこれをやろう」
男は少年に、そのまま鞘に入った刀を放ってよこした。
「う…?」
自分の目の前に放られた刀を見おろし、意図を理解する事が出来ない少年は吼えるのも刀を振るのも止め、立ち尽くして小さく声を漏らした。
「生きたいなら、強くならにゃあ…今より強くなりたいなら、ついてくるといいよ」
男はそのまま踵を返すと、一度だけ少年を振り返り町の方へ歩き出した。
少年は漆黒の瞳を、目の前の刀と男の背中を行ったり来たりさせ…血濡れの刀を捨て、鞘に納まった刀を拾い上げて男の背中を追いかけた。
「坊主、名前は?」
「アイク」
ついて来る少年を横目に問い、帰って来た答えにはわずかに目を丸くした。
「おや、異人だったのか。髪も目も、私たちと同じだからこの国の子かと」
「…おまえは?」
「私は、小五郎。それから、今日から私の事は師匠と呼びなさい」
「…ししょー」
少年は初めて聞く言葉に首を傾けたが、不思議と嬉しい、と感じていた。